大賀ハスを探して2

前回、大賀ハスの写真を撮りに行って空振りしたので、千葉公園へ行ってきました。

この公園は大賀ハスがたくさん植えられた名所となっていて、開花期には「大賀蓮まつり」が開かれます。毎日、開花した蓮の花を数えてホームページで公開までしているほどの熱の入り方。今度は絶対に間違いなく、大賀ハスが見られるはず!

 

蓮の花の寿命は4日間で、その間は毎朝、夜明け前に開き始め、昼頃には閉じてしまいます。そして4日目には閉じ切らないまま、花の形が崩れはじめ、花びらやしべがバラバラと散ってくるようです。蓮の花を愛でるなら、午前中の早めの時間でないとならないので、間に合うように家を出ました。

 

ちょっと遠いと思っていたのですが、電車内で本を読んでいるうちにあっさりと千葉駅に到着。

数年前にリニューアルしてすっかり様変わりした千葉駅。前は改札を出れば地上階だったのに今は違うので戸惑いますが、改札を出たらすぐに大賀ハスの写真が目に飛び込んできました。おっと、少し先にまた1枚……もしかして、「ハスに会いたければ、これを追いかけておいで!」ということでしょうか?

蓮の写真を目印にして進み、駅を出たらモノレールの下の道を歩いて(つい早足になりつつ)、10時ちょうどに千葉公園に到着。すでに池にはたくさんの人が押し寄せるように集まっていて、花を眺めたり、写真を撮ったりしています。良かった、まだたくさん咲いている!!

 

蓮の花自体は不忍池などで何度も見ていますし、大賀ハスは特に見た目が他のハスと変わるわけではないので、大賀ハスだから特別感動するということでもないのですが、やはり古代からよみがえった蓮だと思うと感慨深いものがあります。

 

それにしても、蓮の花は大きくて迫力がありますし、作りも整いすぎていて、本当に自然物なのかと思うくらいです。初めて間近で見たのは、子どものころに直売所で切り花として売られていたのを買ってもらったときでしたが、綺麗すぎてなんだかこの世のものとは信じられないような気持ちで見つめたのをよく覚えています。「なるほど、極楽浄土に咲く花になるのがわかる」と子供心に納得したものでした。

蓮は切り花には向かないのか、活ける前にすべき下処理があったのか、それとももともと寿命だったのか、残念ながらその花は1日でバラバラと崩れてしまいました。花びらは大きくて重みもあり、1枚落ちる時にも「パサッ」と小さく音がしましたし、まとめて何枚か落ちた時には「バサバサッ」という音にびっくりしたものです。

 

あんなに美しかったのにすぐしぼんでしまったのは悲しかったですが、その姿を見ていて思い出したのは、ミヒャエル・エンデの『モモ』に出てくる“時間の花”でした。主人公モモは時間を人々に届ける、いわば時の番人のような老人ホラと出会います。彼はモモに時間の花を見せてくれるのですが、それは水の中から咲いてきて、咲くとこの世で一番美しい花だとしか思えず、なのに見惚れているとすぐにしおれていってしまうのです。するとまた水中から別の花が浮かび上がってくるのですが、それは前の花とは違った姿をしているのに、また「これぞ一番美しい」と思わせる花です。でもその花もすぐに枯れて、また次の美しい花が現れて、という現象がいつまでも繰り返されるのでした。

実はこの花はモモ自身の一時間である、とホラは教えてくれます。人間が「今」という時だけを与えられた存在であること、「時間」というものの不可逆性……この“時間の花”ほど、時間の尊さを美しく的確に表現したものを、私は読んだことがないように思います。

 

ところで、水の中から咲き、幻のように美しく、寿命は短い“時間の花”。これはまさに、蓮もしくは睡蓮の花を連想させます。実際にエンデ自身の手による挿絵でモモが持っている花も、蓮によく似ていて、エンデは蓮の花から着想を得たのではないかとひそかに思っています。なので、蓮を見るといつも、時間の花のことを考えずにはいられません。

 

そんなことを考えながら写真をひとしきり撮り、カメラ越しでなく肉眼でもよく見て、ついでに1枚だけスケッチもしてきました。こういう人の眼のあるところで絵を描くのは苦手なので、端の方でこそこそと描いていましたが、やっぱり話しかけられました。こんなとき、透明人間になりたくなります。

 

そして早めのお昼ご飯を食べて、今度は佐倉へ。せっかくなので、ついでにもうひと仕事!佐倉にある歴史民族博物館付属の「くらしの植物苑」へ向かいました。

ここは一般的な植物園ではなく、食べ物や染色、建材、薬材などとして古来から人々の暮らしに関わってきた植物を紹介する植物園です。ここでも図鑑に使える写真が撮れるのではないかと思い、寄ることにしたのです。

 

もともとここは一般的な植物園ではないので興味のある人しか来ませんし、この日は平日で、しかもかなり暑い日。もしかしたら貸し切りかとも思ったのですが、他に二人ほど来場者がいました。さすがはこんな日に来るだけあって、なんでもない雑木のような木に近寄ってしげしげと観察したりして、なにか熱心なご様子。

ご興味があるのは植物に?それとも歴史や風俗でしょうか?わかりませんが、勝手に親近感を覚えてしまいました。

私も敷地の隅々までひとつひとつの植物をじっくり見て回り、バショウ(バナナの仲間で、繊維が取れる)やウド、アマチャ、クルミなどを撮影しました。

 

ふと、隅に植えてある木に目が留まりました。一見して桜かなと思いきや、札には『ミズメザクラ』とあります。松本民芸家具に用いられていると知って興味を持ち、前に少し調べたことがある木でした。

名にサクラとつくのに桜の仲間ではなく、カバノキ科。木の外見と木目の様子が桜に似ているからそう呼ばれているのだと書いてありましたが、まさかここで実物に会えるとは!

たしかに木の皮は少し艶のある灰色、横方向に模様が入って桜の幹にそっくり。なんと、葉の形までよく似ています。なるほど、これはサクラと呼びたくなるわけです。

ここで見られると期待していませんでしたが、こうして知識としてだけ知っていたものを、実際に向き合って観察し、より深く知る体験ができたことに喜びを感じます。まさにフィールドワークの醍醐味!

 

今日は植物の写真も撮れたし、ちょっとした知識欲も満たせて、たくさん歩いて……心地よい疲れとともに、充実した一日に満足を覚えながら、城下町らしい切り通しを抜けて佐倉駅へ戻りました。

次は季節をずらして、また植物の観察と撮影に来たいと思います。

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コメント: 1
  • #1

    凹太 (火曜日, 07 1月 2025 02:30)

    写真が撮れてよかった。大賀ハスについて上の地層から落ちてきた種ではとか、自宅に持ち帰り発芽させたことで疑問視する人がいるようです。科学的には疑うことはいいことです。もう一度掘って確認すればいいのですが、簡単なことではありません。でも、埼玉県行田市のクリーンセンター建設工事の際に掘り起こされた約1400~3000年前と思われるハスの種子が自然発芽して開花したことからも、また他の例からも大賀ハスは本物でしょう。すごいよね。いつか佐倉の植物苑に行ってみたいです。